修道学園さま
2022/07/04
修道学園 ×
comuoonの導入を
自ら学校に提案し
学校の理解とサポートで
実現した「聴こえる授業」
広島を代表する中高一貫の男子校、修道中学・高等学校は、1725(享保10)年設立の藩校を母体とする名門校です。
「責任ある自由」に基づく自主性を重んじる校風のもと、精神的に自立した優秀な人材を各界に輩出しています。ここで学ぶ中学三年生の本地航大君は、comuoonを使って日々充実した学習活動に取り組んでいます。
教師
町 一誠さま
修道中学・高等学校 国語教論。修道高等学校 OB。大学院で社会心理学を学び、卒業後、母校で教壇に立つ。1・2年生で本地君の担任として、comuoonの導入・活用をサポート。
生徒
本地 航大君
修道中学校3年生。5歳で中程度の難聴と診断される。家族の支援のもと、「聴こえ」に関する情報を収集しながら、幼稚園の頃から英会話を学び、楽器演奏を通じて音楽に親しむなど積極的な活動で、自らの学習・生活環境を切り拓いている。
導入場所 | 英語の授業 |
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導入機器 | comuoon mobile TypeHS |
導入期間 | 2017年7月から |
導入前の課題
「聴こえにくさ」を支援する、特別な
学習支援教材が無かった。
聴こえる音と先生の表情を見て学んでいた生徒は、次第に難しくなる英語の授業についていけるのか、不安を感じていた。
導入後
一気に不安が解消した。
英単語の子音が聴き取りやすくなり、不安が一気に解消。GTEC(スコア型英語4技能検定)受験にも使用し、無事合格した。
Q.comuoon導入の経緯について
お聞かせください
本地君: 聴こえにくさに関しては、両親が熱心に学んで、できる限りのサポートをしながら僕を育ててくれました。幼稚園や小学校では聴こえる音をつなげ、相手の表情や口の動きを見ながら言葉を覚え、物事を理解しました。その過程には大変なこともありましたが、中学受験を頑張れたのも、両親やまわりの方々のおかげです。
comuoonは以前から知っていて、試聴したこともありました。そのすごさにあらためて驚いたのは、母とNPO法人日本ユニバーサル・サウンドデザイン協会主催の『きこえとことば』の未来セミナーin Hiroshimaに参加した時です。講師の先生や中石さんの話は、とても興味深い内容でした。聴き取ることに神経を使わず、内容に集中できるストレスの無さを体感できました。
実は、修道中学に入学して学校生活や授業内容には満足していたものの、先のことを考えると不安がありました。難聴は英語の子音が聴こえにくいとわかっていたので、両親は幼稚園の頃から英会話を習わせてくれました。だから初歩的な英語の授業は十分に理解できたのですが、次第に難しくなっていく授業内容に「ついていけるだろうか」と不安を感じ始めていたのです。セミナーでcomuoonの明瞭な音を聴き、あらためて「授業で使いたい!」と、強く思いました。
町先生: 私は、彼が1・2年生の時の担任です。入学して間もなく、お母様から「comuoonという聴覚支援システムを授業で使えませんか」と相談されました。コツコツと熱心に勉強する本地君を見ていて、聴こえにくさが学習の妨げになるのはどうしても避けたかった。さっそくデモンストレーションでcomuoonの音を聴かせてもらい、校長や教頭と相談しながら導入を検討することにしました。幸いNPO理事の方々に、彼やお母さんの熱意と本校の教育方針や受け入れ態勢が理解され、寄贈という形でcomuoonが使えるようになって本当に良かったと思っています。
本校は、藩校以来の伝統校であるとともに、新しい価値観を積極的に取り入れる「温故知新」の校風があります。私は本校OBですが、前例に縛られず、生徒の視点で新しい環境づくりを積極的に進める器の大きさに、あらためて良い学校で学んだな、そこで働いているのだなと、誇らしく思えました。
Q.comuoon導入によって、どのような変化が
ありましたか
本地君: comuoonの明瞭な音で英単語の正しい発音が聴き取れるので、自分も正しい発音が身に付き、英語の理解度が高まったと感じます。
内容はこれからどんどん難しくなっていきますが、もう不安はありません。友達と同じ条件で勉強できるのが嬉しいです。はじめは「ダメもとで先生に相談してみようか」と母と話し、おそるおそる相談したのですが、相談して本当に良かったと思っています。
町先生: 現在comuoonは、毎日ある英語の授業と、年間10コマのオンライン英会話(タブレットで相手と話す授業)で使っています。実は、彼が補聴器を忘れた時に数学の授業で使ってみたところ「聴こえ方が違う」と言うのです。それなら英語に限定せず、他の授業でも使ってみてはと勧めましたが、頑張り屋だからか、思春期のせいか、いまだに英語の授業でしか使わない(笑)。でもそこが彼らしさなのかもしれません。
自分でできることは、できるだけ自分でやろうとします。頼らざるを得ない時は頼っても、特別扱いはされたくない。そこに彼の気概を感じます。
本校にとってもcomuoonの導入は、「聴こえ」への理解を深める良いきっかけになりました。中石さんの「難聴者は補聴器を着けていれば大丈夫、と世間が思っていることがそもそも間違っている。補聴器を着けても完璧ではない。聴こえに対してもっと関心を持ち、理解ある社会にしていきたい」という言葉には共感しました。
本地君: 先生方は、英語のリスニングテスト「GTEC(スコア型英語4技能検定)」でも、comuoonを使って受験できるよう、事務局と交渉して許可を得てくれました。学校は「聴こえ」に関してきちんと理解し、サポートしてくれます。3年生からは担任が代わりましたが、今の担任の先生もよく話を聴いてくれます。本当に、修道中学に入って良かったです。
Q.「聴こえ」や「学び」に関して、
思うところを聞かせて下さい
町先生: 教師の役割は、生徒が社会を生き抜く力を身に付けるためのサポートに徹することだと考えています。すべての教科の基本は、基礎を叩きこむこと。テクニックは最後で良いのです。私が担当する国語で言えば、語彙力を高め、読書の習慣を付けさせること。教科以外の面では、生徒に媚びることなく、信頼され、相談される存在でありたい。もちろん教師だからと言って、何でもできると全能観を持つのは間違いです。常に、自ら学び続ける気持ちを忘れてはいけないと思っています。
本地君は、聴こえにくさを決してできない理由にしない。そこに私は学ばされます。聴こえにくい方は英語と同じくらい音楽が苦手と聞きますが、彼は吹奏楽部でバスクラリネットを担当し、放送部では朗読でコンテストに挑戦します。ご両親がベースやドラム、サックスを演奏されるらしく、お母様と連弾で「A列車で行こう」を発表会で演奏したそうです。びっくりしました。
本地君: 家族が音楽好きで、子どもの頃からそばにいつも音楽があり、自然に自分でも演奏するようになりました。だから、中石さんが開発した「クリアネスイヤホン」に以前から興味があり、クリスマスに両親からプレゼントしてもらいました。高音がとても聴き取りやすく、大好きな曲を「クリアネスイヤホン」で聴くのは、とても楽しい時間です。
今はボカロP(VOCALOID技術を駆使して創作活動を行う人の通称)が好きで、よく聴いています。AI技術もおもしろいと思うし、世の中がどう変わっていくのか楽しみです。理数系が好きですが、国語も好きです。井上靖の「孔子」や「天平の甍」は夢中で読みました。
将来就きたい仕事はまだ決めていませんが、どの分野にでも飛び出せるよう、知識や教養だけでなく人間としての基礎力をしっかり身に付けておきたい。今の環境ならそれが叶うので、自分に負けないよう頑張っていきたいと思っています。