成田空港さま
2022/07/01
成田空港 ×
一人でも多くの方に
空の旅を楽しんでいただくため、
世界トップレベルの
ユニバーサルな空港をめざします。
2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を前に、世界トップレベルのユニバーサルデザイン(以下UD)の実現を目指す成田空港さま。 日本の表玄関として、聴こえやすい空港の実現に向けて取り組まれている事例をご紹介します。
空港 窓口
山田 浩介さま
成田国際空港株式会社 営業部門 CS 推進部 営業 企画推進室 副主幹。成田空港のユニバーサルデザイン(以下UD)に関する取り組みを推進する委員会の中心メンバーとして、2020年に向けて様々な施策の実施、実現に邁進している。
導入場所 | 11か所のご案内カウンター |
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導入機器 | comuoon connect |
導入前の課題
UD化の改修対応で物理的な制約が多い中、世界トップレベルの対応が求められていた。
1978年の開港から段階的に整備・拡張が進められた既設空港であるため、施設のUD化に関しては改修による対応が前提となり、物理的な制約が多かった。
人的支援や情報提供などのソフト面での対応を強みとしてきたが、2017年に政府が策定した「UD2020行動計画」において、2020年とその先を見据えて、世界トップレベルの対応が求められた。
障害の有無にかかわらず、誰もが能力を最大限に発揮し、働く喜びを分かち合える職場づくりをしたい。
導入後
聴こえの改善についてポジティブなお声を いただいている。
導入後間もないこともあり、利用件数に関しては徐々に伸びていくと思われるが、実際にご利用いただいたお客様からは聴こえの改善についてポジティブなお声をいただいている。
Q.comuoonを導入するに至った経緯を
お聞かせください。
2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックを前に、2017年の2月に日本政府が「UD2020行動計画」を策定しました。これは、2020年とその先を見据えて国内のUD水準の底上げを目指したもので、日本の表玄関として安全・円滑に多くのお客さまを受け入れる役割を担っている成田空港においても、羽田空港国際線ターミナルと共に「世界トップレベル」の水準への対応が求められました。
そこで、2017年5月に障害者、大学教授などの有識者、空港関係者などで構成される「成田空港UD推進委員会」を設立、当事者参加による現場視察などを踏まえて課題を明確にした上で、UDに関する基本的な考え方や取り組みの方向性などについて10数回にわたって検討を進めてまいりました。
その中で、成田空港のUDに関する取り組みを推進するための指針となる「成田空港UD基本計画」を策定、多岐にわたる基本計画の取り組みの内のひとつして、難聴者向けのコミュニケーション手段の充実についての具体的な検討も重ねてまいりました。欧米の空港ではよく知られている「ヒアリングループ」をはじめ、さまざまなタイプの聴こえ支援ツールを検討していきました。
単純なスペックの比較だけでなく、具体的な導入事例や市場動向の調査、実際に空港内に設置しての検証や実験を行い、日本人の補聴器装着率の低さやプライバシーを守るためには音が広がりすぎない方が良いなどの観点からcomuoonを有力視しながらも、最終的には聴こえにくい方を含む障害当事者とのディスカッションの結果、総合的にcomuoonを採用させていただくことにしました。空港という場所に設置してもなじむスマートなデザインやカラーリングも決めてのひとつになりました。
Q.現在comuoonをどのように活用されて
いますか?
成田空港内には旅客ターミナルが3つあるのですが、その中にお困りごとなどを抱えたお客さまにご利用いただく「ご案内カウンター」というものがございます。そこでは、耳が不自由なお客さまに対して、手話技能検定4級以上を有するスタッフが対応する手話によるご案内サービスのほか、不在の際のテレビ電話により遠隔での手話案内、筆談による聴こえの支援を行っております。
今回、全20か所あるこのご案内カウンターの内お客さまのご利用が多い11か所のカウンターに新たな聴こえ支援の手段としてcomuoonを設置いたしました。導入してから間もないこともあり、利用件数に関しては徐々に伸びていくと思われますが、実際にご利用いただいたお客さまからは聴こえの改善についてポジティブな反応やお喜びの声をいただいております。
また、ご案内するスタッフ側からも「大きな声やリアクションをせずとも、より自然な形でのご案内ができて良かった」という声が上がってきております。現在、お手伝いが必要な方向けのホームページに情報を掲載したり、設置カウンターにご案内のPOPを掲出しておりますが、さらなる利用促進を図っていくためにも、comuoonの存在とその価値をいかにお客さまにアナウンスしていくかが今後の課題だと感じております。
Q.窓口業務での導入を検討されている方に
メッセージをお願いします。
空港という場所には、目的・国籍・年齢・人種・宗教・文化など、多種多様なお客様がいらっしゃいます。その中には、当然のことながら障害のあるお客さまも多く含まれていますし、高齢化が進む中で今後聴こえにお悩みのご高齢者の割合が増えていくことは間違いありません。
しかも、空港は手続きの多い場所でもあります。その点で、多かれ少なかれ煩わしさやバリアを感じやすい場所であると言えます。しかしながら、空港は旅に出る場所、広大な非日常空間でもあります。他の場所にはない魅力とパワーがある、とても楽しいところだと思うのです。一人でも多くの方に空の旅を楽しんでいただくことが私たち成田空港の使命ですし、空港が使いにくい場所と思われたり、空港を使うのが嫌だという理由で空の旅を諦めてしまう方がいらっしゃるのであれば、そうならないために全力を尽くしていくこともまた私たちの使命です。
そういう意味では、お客さまに特段の準備や練習、道具がなくともご利用いただけるcomuoonは、重要なツールのひとつだと感じています。2020年に向けて、またその先を見据えて、成田空港はもちろんのこと、他の空港をはじめ、多くの交通機関などにもこのような聴こえ支援の輪が広がっていってくれればと願っています。
※取材内容は2019年3月時点のものです。